移住者の声

いいトコ
voice
08

ワインは農産物 ここならではのワインを

大迫佐藤葡萄園
オーナー 佐藤直人さん

Profile

1961年花巻市生まれ。大学入学と同時に花巻を離れ、大学卒業後は医療機器メーカーのエンジニアとしてヨーロッパやアメリカ、アジアなど世界各地に赴任。2016年、会社を退職して大迫町に移住し、ブドウ農家に。自家ワイナリーを建設中で、2021年から稼働予定。

ぶどうの里大迫でワインに特化したぶどうを栽培

大迫のまちを見下ろす高い丘の一角に佐藤葡萄園の畑はある。栽培しているのは生食用が少しあるだけで、あとはワイン用の品種ツヴァイゲルトレーベだ。
「実は農業に興味があるわけじゃないんですよ。とにかくワインを作りたくてぶどうを栽培しています」
と笑いながら話すのは佐藤直人さん。ツヴァイゲルトレーベも、日本ではここ大迫だけで栽培されるロースラーやラタイも、オーストリア固有のワイン用品種だ。大迫町が花巻市との合併前からオーストリアのベルンドルフと姉妹都市になっている関係で、この独特の品種が大迫にやってきた。

戦後すぐに、初の公選で就任した国分謙吉岩手県知事が「大迫はフランスのワイン産地ボルドーに似ている」とぶどう栽培を奨励。それ以来大迫はぶどうやワインの産地となっている。その大迫にやってきて、ワインをつくるためのぶどう農家として2017年に就農したのが佐藤直人さんだ。

ワインと出会い巡り巡って花巻へ

佐藤さんはもともと花巻市の出身。花巻北高卒業後に千葉大工学部へ進学し、高校の頃からの目標通り医療機器メーカーのエンジニアになった。

就職後、ベルギーへ赴任しヨーロッパ各地を出張で訪れた佐藤さんは、そこでワインに出会う。同地では、ランチミーティングの時も当たり前のようにテープルの上にワインがデキャンタで置かれているのだという。ベルギー赴任中にワインに魅せられた佐藤さんは、そののち異動したアメリカで更にワインにはまることになる。ワイナリーが多いカリフォルニアに休みのたびに通ったりもしたそうだ。

2012年末に日本に帰ってきてから、自分でもぶどうを栽培してワインを作ろうと、当時住んでいた静岡の近くである山梨や長野に行ってみたりしたとのこと。
「60歳前には会社を退職してぶどう農家やろうと思っていました。55歳のそんな時にまた転勤の話があって、行ってしまうと遅くなるかなと思っていたんですよ」

そんな時に出会ったのが花巻市のグリーンツーリズムだった。山梨や長野では土地を買い、施設を整備した上で4~5年後まで収穫を待たなければならない。しかし花巻ではもう実をつけている木が並んだぶどう畑をすぐに借りられる。考えた挙句、2016年の1年間会社を休職して大迫に移り住み、ぶどう栽培を畑の持ち主に習ったのだという。2016年末には退職して完全移住。2017年シーズンからは独立してぶどう農家デビューとなった。
「両親はもういないし、実家も無くなったし、本当は花巻に帰ってくるつもりはなかったんですけどね。偶然の出会いです」

ワインは農産物 ここならではのワインを作る

海外赴任が多かった佐藤さん、そのすべてが単身赴任だったという。奥様はご自分の仕事の関係で、現在も自宅のある静岡県に在住、佐藤さんはひとりで大迫に移住してきた。とはいえ奥様も佐藤さんのワインづくりを応援しているのだそうだ。
「スリーベアーズというブランドの命名も家内です。家にお気に入りのテディベアのぬいぐるみが3匹いるので(笑)」

これまでワイン醸造を町内の高橋葡萄園に依頼していた佐藤さんは、いま自らのワイナリーを立ち上げるべく準備中だ。2020年中には建屋を造り、来シーズンから稼働させる予定とのこと。そこでできるワインを首都圏で販売する拠点を作ろうかと奥様から提案もされているという。今はコロナ禍で会えないが、その絆は強い。

佐藤さんの好みのワインはアメリカのジンファンデルという深い赤ワインとのことだが、自分で作りたいのはこの地ならではのワインだという。

「ワインは農産物だと思っているので、その土地のぶどうで作られたワインがその土地の料理に最も合っていると思います。雑味のない、自然を感じられるワインを作るというのが私のこだわりです」