移住者の声

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身につけてきたことを活かしたみんなが集まるほっこり場所作り

やなのうえプロジェクト
髙橋典人さん

Profile

●1961年花巻市出身。
自然観察指導員やネイチャーゲーム指導員などの資格を持つ。
●やなのうえプロジェクト
岩手県花巻市東和町小友2区80番地

様々な利用の仕方の体験交流施設

まるでドラえもんのポケットだ。髙橋典人さん(60歳)の話を聞いていると、やりたいこと、できること、そして持っている資格などが次から次に出てくる。
はじめは古民家リノベーションによる民泊の話を聞こうと伺ったのだが、実は単なる民泊ではなかった。「敷地内にピザ窯も、BBQコーナーもあります。蔵ではワークショップやライブも、セミナーなどできます。蔵の後ろではドッグランができますし、蔵の脇の空き地ではキャンプもできます。集会室では女子会にも利用してもらってます。みんなでいろいろ体験したついでに泊まれるという方が正しいですね」だからここは民泊施設ではなく、多目的体験交流スペースと名付けているそうだ。
「ネイチャーゲーム指導員の資格を持っているので、子どもたちの自然体験にも利用してほしいし、コーヒードリップマイスターを持っていて、この前はドリップ教室を開きました」

マイペースな人生の中で経験したこと

生まれも育ちも花巻市。地元の小学校、中学校に入った髙橋さんは、高校への進路を決める段階で担任の先生にひとつの提案を受けたのだという。
「定時制高校に通いながら、学校の理科・技術実習助手をやっていた先輩がいたのですが、そのうちのひとりが高校を卒業して就職するため辞めるので、そのあとを引き継いでやってみないか?と声をかけられたのです。それもいいかなと思いました」
高校は地元で、当時定時制があった花巻南高校に入り、昼間は中学校に勤務して夜高校に通う生活を4年間送った。高校卒業にあたり、なんとなく就職しようと思っていたところ、今度は4年間成績が1番だったことで大学を勧められ、これも地元の富士大学に推薦で入ることとなった。
「先々の就職のために資格はいろいろ取ろうと、教員免許や図書館司書など取りました。特に司書は当時東北ではここでしか取れなかったので」
大学を出たあと、取った教員免許を生かすべく教員採用試験を受け続け、講師などを勤めながら7年越しで中学校の社会科教員として本採用となった。地元花巻や沿岸地方など、他の先生方以上にあちこち転勤してきたという。
「いろんな学校で働きたかったので転勤願いは結構出しました。独り身で引越しも楽だし。転勤のたびにその町に引っ越して、その町に住むことを楽しんできました。まちづくりに興味持ったのはその経験からです」
そんな髙橋さんが定年前の57歳で教員を早期退職したのは、やりたいことがあったからだという。

人が集まる場所づくりを

まちづくりに興味を持ち始めた髙橋さんは、その後の人生でカフェ経営を目指すようになる。
「昔は花巻のまちにもたくさんのカフェがありました。今はほとんどなくなってしまったので、自分でやってみようかなと。人が集まる場所づくりもしたかったし、マイペースで残りの人生を送れるとも思ったので(笑)」
ところが教員を退職した途端に社会教育指導員へと声がかかる。まなび学園で3年間勤務しながら店舗物件を探していた髙橋さんは、花巻市で行われたリノベーションスクールや東和町のまちづくり団体と関わる中で、今住む古民家の存在を知ることとなる。
「なんか面白いことができそうだと、3日で購入を決め、リノベーションには地域おこし協力隊の方々などにも手伝ってもらいました」
2021年3月で社会教育指導員も辞め、今はパンの販売や道の駅「とうわ」でコーヒーを淹れながらこの場所を経営する。
自由にマイペースで生きてきた髙橋さん。その中で身につけてきたことを活かせるこれからのことを楽しそうに語りながら、美味しいコーヒーを淹れてくれた。

移住・定住ガイドブック「花巻ひと図鑑」より