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はなまきのまちのエントランスとして人と人とが出会えるゲストハウスを

ゲストハウスmeinn
福田一馬さん

Profile

●1984年 盛岡市出身。
●ゲストハウスmeinn(現在休業中)
岩手県花巻市末広町2−13
●花巻食堂
岩手県花巻市大通り1丁目7−36
2022年取材(内容は取材当時の情報)

笑顔で迎えるまちの「エントランス」

ゲストハウスの扉を開けると、福田さんのトレードマークである笑顔が迎えてくれる。
古書店風人堂も入居している1階のカフェでランチやお茶する時も、宿泊した夜、カフェスペースを兼ねたリビングのテーブル席やカウンターに座っても、そこにはもれなく福田さんの笑顔がある。 「meinn(メイン)」という名前は「まち(machi)」の「エントランス(entrance)」の「宿(inn)」を組み合わせて名付けられた。その名の通り、ここはここだけで完結する宿ではなく、花巻のまちを体験する宿となっている。
「簡単なつまみは提供できますが、まちに出て行けば美味しい店がたくさんあるし、シャワーはあるけど風呂に入りたければ花巻には12もの温泉があります。花巻のまちも合わせてmeinnです」
格安で宿泊できるゲストハウスとして、オープン以来この3年、旅の外国人や若い人たちのコミュニティを築いてきた。

海上自衛隊から地域おこし協力隊へ

福田さんは盛岡の出身。高校卒業後海上自衛隊に入隊している。倍率が高い一般曹候補学生に合格することができ、幹部候補生として任官したのだった。
「13年の在任中、全国各地13回転勤してきました。もともと体を動かす仕事をしたかったし、転勤も多かったけれど、独身の頃はあちこちに行けることを楽しんできました」
幹部任官後、同僚で同郷の奥様と結婚。翌年長男が生まれた。幹部として、今後の昇進も期待できたが、その後もあちこちへの転勤は続く。
「腰を落ち着けて家族で一緒に過ごすことが自分と家族の幸せじゃないかなと考えました。このまま海自にいればそれは無理かなと」
次の道を探していた時に、偶然花巻市の地域おこし協力隊員募集を知る。その仕事がどんなものかわからなかった福田さんはいろいろ調べた。
「ミッションはリノベーションまちづくりということでしたが、それも何のことなのか知りませんでしたから、ネットなど駆使して調べました。その結果面白そうだなと」
30歳で退官し、2015年10月に一家で花巻市へ移住、赴任した。
地域おこし協力隊員として北九州でのリノベーションスクールにも参加し、花巻家守舎が手掛けた小友ビルやマルカンビルにも関わった。その過程で、その活動に興味を持った全国の若い世代の人たちが花巻市にやってくるのを目にし、花巻を訪れるプレーヤーたちと花巻のプレーヤーたちを結びつけるゲストハウス経営を思い立った。人と人、他地域の人が花巻と触れ合える場所が必要だと思ったのだ。

多様な交流ができる文化の拠点に

ゲストハウス店舗にできる物件を探して、営業をやめた古い旅館の物件が借りられた福田さんは、時折リノベーションワークショップで参加者の手も借りながら、ほぼひとりで全面改装を行い、地域おこし協力隊員としての3年の任期中だった2018年8月にゲストハウスmeinnをオープン。
それから3年、全国からやってくるプレーヤーたちや外国からの観光客を含む若者たちとも、併設のリビング兼カフェで語り合うコミュニティを形成しながら、花巻のまちの案内も行う。
このリビングを使ったトークショーやミニライブ、映画鑑賞会などにも場所を貸し出すなど、知名度が高まるに従い文化の中心的存在になってきた。
コロナ禍で宿泊客が激減する中、2020年秋からはリビング壁面を貸し出し、本の販売を行う風人堂が営業を開始。本目当ての集客や、カフェでの特製たまごサンドやドリンクメニューの充実により、営業努力を続けている。
地域おこし協力隊OBとして、リノベーションによる事業者として、アグレッシブに活動する福田さんは、花巻のまちの活性化のために情報も発信し続けている。

移住・定住ガイドブック「花巻ひと図鑑」より